
印紙税は主に不動産の購入契約のタイミングで登場する税金です。
不動産投資において、印紙税は他の税金と比べてそれほど大きな金額にはなりません。
しかしながら、ついうっかり印紙税の納付を忘れてしまうと、ペナルティとして余分に税金を納めることになってしまいます。
そのため、本ページにて、どんな時に印紙税が必要となるのかを把握し、いざという時に忘れないようにしましょう。
印紙税はどんな税金?
印紙税は、不動産投資に限らず一般的に、契約書や領収書などの文書(「課税文書」といいます)を作成したものに課税される税金です。
不動産投資に関係する課税文書は主に次の通りです。
- 土地・建物の売買契約書
- 建物の工事請負契約書
- ローン借用書
- 売買代金の領収書等
これらの課税文書を作成したとき、印紙税を支払う必要があります。
ただし、個人が事業とは関係なく自宅を譲渡した場合等は課税の対象となりません。
主な非課税文書
不動産に関係する契約書類で非課税のものは次の通りです。
- 建物賃貸借契約書
- 建物賃貸借権の譲渡契約書
- 抵当権設定契約書
- 使用貸借契約書
- 委任状
建物賃貸借契約書は非課税ですが、その際に敷金や手付金を受け取り作成した領収書については、「受取書」として印紙税が課税されますので気をつけましょう。
納付方法


印紙税は、課税文書に収入印紙を貼り付けて納付します(この方法を印紙納付と言います)。
この時、印章または署名により、しっかりと消印をしなければならないことに注意しましょう。
ちなみに収入印紙は、郵便局などの「収入印紙売りさばき所」にて購入可能です。
店舗によっては、コンビニエンスストアでも販売されています。
納税義務者
原則として納税義務者は、課税文書を作成した者です。
2者以上によって作成された課税文書については、個々の契約によって、それぞれの負担額が取り決められますが、全員の負担額の合計が規定の税額を満たしていれば問題ありません。

代理人について
代理人が、本人を代理して金銭を受領し、受取書を作成した場合、印紙税が課せられるのは代理人となります。
納税義務者の原則は、課税文書の作成者であるからです。
印紙税の金額は?
印紙税の税額は、課税文書に記載された金額に応じて課税される額が決められています。

記載金額について
記載金額とは、文字通り、契約書に記載された各契約内容の金額のことですが、「何を記載金額とするのか」は場合によって異なります。
以下に、不動産に関する主な課税文書の各ケース毎に記載金額の定義をまとめました。
売買契約書
- 原則として、記載金額=売買金額
- 記載金額がない場合、税額=200円
- 代金を増額する場合の変更契約書は、記載金額=増額金額
- 代金を減額する場合の変更契約書は、記載金額なし(税額=200円)
交換契約書
- 記載金額=交換対象物の金額のいずれか高い方
- 交換差金のみが記載されている場合は、記載金額=交換差金
- 等価交換の場合は、記載金額なし(税額=200円)
贈与契約書
- 記載金額がないものとする(税額=200円)
賃料の受取帳
- 1冊1年分毎に、税額=400円
土地賃貸借契約書
- 記載金額=「地上権や土地貸借権等の後日返還されることが予定されていない権利金の金額」
- 敷金や保証金等の後日返還が予定されるものは、記載金額に含まれない
請負契約書
- 記載金額=請負契約の金額
上記の通り、いずれの課税文書についても、記載金額がないからといって、非課税になるわけではありません。
記載金額がない場合も、200円の収入印紙が必要になります。
各課税文書の記載金額と税額
記載金額が分かれば、それに応じて決められる税額も簡単に求められます。
以下では、不動産に関係する4つの課税文書(売買契約書、工事請負契約書、受取書、借用書)について、それぞれの記載金額と税額を表にまとめました。
記載金額 | 原則 | 軽減 |
---|---|---|
記載金額なし | 200円 | 200円 |
1万円未満 | 非課税 | 非課税 |
1万円超 10万円以下 | 200円 | |
10万円超 50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超 100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超 500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超 1,000万円以下 | 1万円 | 2,000円 |
1,000万円超 5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超 1億万円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超 5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超 10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円超 50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円超 | 60万円 | 48万円 |
不動産の交換契約書も、上記の表の通りに税額が決められます。
また、不動産の売買契約書については、平成26年4月1日から平成30年3月31日までの間に作成される契約書は軽減措置の対象となります。
記載金額 | 原則 | 軽減 |
---|---|---|
記載金額なし | 200円 | 200円 |
1万円未満 | 非課税 | 非課税 |
1万円超 100万円以下 | 200円 | |
100万円超 200万円以下 | 400円 | 200円 |
200万円超 300万円以下 | 1,000円 | 500円 |
300万円超 500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超 1,000万円以下 | 1万円 | 2,000円 |
1,000万円超 5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超 1億万円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超 5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超 10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円超 50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円超 | 60万円 | 48万円 |
工事請負契約書についても、売買契約書と同様に、平成26年4月1日から平成30年3月31日までの間に作成される契約書は軽減措置の対象となります。
記載金額 | 税額 |
---|---|
記載金額なし | 200円 |
5万円未満 | 非課税 |
5万円超 100万円以下 | 200円 |
100万円超 200万円以下 | 400円 |
200万円超 300万円以下 | 600円 |
300万円超 500万円以下 | 1,000円 |
500万円超 1,000万円以下 | 2,000円 |
1,000万円超 2,000万円以下 | 4,000円 |
2,000万円超 3,000万円以下 | 6,000円 |
3,000万円超 5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円超 1億万円以下 | 20,000円 |
1億円超 2億円以下 | 40,000円 |
2億円超 3億円以下 | 60,000円 |
3億円超 5億円以下 | 100,000円 |
5億円超 10億円以下 | 150,000円 |
10億円超 | 200,000円 |
記載金額 | 税額 |
---|---|
記載金額なし | 200円 |
1万円未満 | 非課税 |
1万円超 10万円以下 | 200円 |
10万円超 50万円以下 | 400円 |
50万円超 100万円以下 | 1,000円 |
100万円超 500万円以下 | 2,000円 |
500万円超 1,000万円以下 | 10,000円 |
1,000万円超 5,000万円以下 | 20,000円 |
5,000万円超 1億万円以下 | 60,000円 |
1億円超 5億円以下 | 100,000円 |
5億円超 10億円以下 | 200,000円 |
10億円超 50億円以下 | 400,000円 |
10億円超 | 600,000円 |
消費税は記載金額に含まれる?

課税文書の記載金額は、消費税の表記によって、税込価格か税抜価格かの判断が異なります。
契約の金額と消費税の金額がそれぞれ表記されており、消費税額を区分できる場合は、消費税抜の金額が記載金額となります。
一方で、消費税の金額が具体的に明記されていない場合は、消費税込の金額が記載金額となるのです。
印紙を貼り忘れたら?
印紙を貼り忘れたりして、納付を怠った場合はペナルティ(過怠税:かたいぜい)が課せられます。
1.納付すべき印紙税を納付しなかった場合
納付しなかった印紙税の額の3倍の過怠税が課せられます。
2.印紙税を納付しなかったことを自ら申告した場合
納付しなかった印紙税の額の1.1倍の過怠税が課せられます。
3.印紙を契約書に貼ったが、消印をしなかった場合
消印されていない印紙の金額と同額の過怠税が課せられます。
まとめ
印紙税は、課税文書(売買契約書や請負契約書等)の作成者に、記載金額に応じた金額が課せられる税金です。
納付方法は収入印紙を契約書に貼り付けることによって行われます。
ゆえに、固定資産税のように丁寧に納税通知書が来るわけではないため、納付を忘れてしまうこともあり得ます。
また、印紙を貼り付けていたのに消印を忘れていてもペナルティの対象となってしまいます。
納付方法をしっかりと理解し、どのような契約書類に、どれだけの税額が課せられるのかを把握することで、印紙税に関するケアレスミスを防ぎましょう。